東大寺二月堂 お水取り さだまさし「修二会」の舞台を巡る奈良の旅

東大寺二月堂 旅行

東大寺二月堂は「お水取り」(修二会)で有名ですが、観光客が多い大仏殿から少し離れているのでとても静かな雰囲気で、ダイナミックな景色が広がる回廊は奈良の絶景スポットです。今回は、さだまさしさんの「修二会」の歌詞とともに奈良の風物詩「お水取り」とその舞台をたどります。春寒の弥生3月に、歌に登場する名所を巡りながら古都のそぞろ歩きを楽しんでみてはいかがでしょうか。

東大寺二月堂

東大寺二月堂

東大寺二月堂は、約1,300年前から続く「お水取り(修二会)」で有名な奈良にある仏堂です。毎年3月(旧暦2月)に行われるお水取りでは、練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれる僧侶たちが、御本尊の前で人々の代わりに一年の罪を悔い、国家の安泰や五穀豊穣などを祈ります。

奈良時代に創建された建物は、1667年のお水取りの際に失火し焼失しましたが、1669年に再建され、日本の国宝に指定されています。

二月堂には、誰も見ることが許されない「絶対秘仏(ぜったいひぶつ)」の十一面観音像が安置されています。御本尊の十一面観音像は「大観音(おおがんのん)」と「小観音(こがんのん)」大小二体の観音様と言われています。

東大寺 二月堂

東大寺二月堂の最寄り駅は、近鉄奈良駅。奈良公園、東大寺境内を散策しながら、大仏殿から少し離れた二月堂を目指しましょう。

二月堂は、24時間いつでも訪れることができます。拝観料は無料です。

二月堂 お水取り 2023

東大寺二月堂 お水取りは、3月1日から14日の2週間かけて行われます。

2023年のお水取りの日程は、3月1日(水曜日)~14日(火曜日)まで、松明は毎晩19時から行われます。※12日(日)は19:30~、14日(火)は18:30~

二月堂のお水取り(おみずとり)は修二会(しゅにえ)とも言われますが、正式名称は十一面悔過(じゅういちめんけか)です。

「十一面」とは「十一面観世音菩薩」、「悔過」とは人々が過去に犯した罪を本尊の仏前で懺悔することで、十一面悔過は、二月堂の本尊に罪を懺悔し、鎮護国家・天下泰安・万民豊楽・五穀豊穣などを祈願する儀式です。

また、それぞれの名称の由来は、お水取りは二月堂の本尊に若狭井(わかさい)という井戸から汲み上げたお香水(おこうずい)を供えたことから、修二会は旧暦の2月に法会が行われることからきています。

ちなみに、修二会は、東大寺で行われる一連の法会のことで、その中で最も有名なのが毎年3月(旧暦2月)に行われるお水取りです。東大寺二月堂の舞台で火のついた松明を振り回す「お松明(たいまつ)」は、テレビのニュースなどでもおなじみの光景です。

お水取りを行う11人の練行衆(れんぎょうしゅう)は、毎年、東大寺初代別当・良弁僧正(ろうべんそうじょう)の命日、12月16日早朝に発表されます。

東大寺二月堂の見どころ

東大寺二月堂 景色

東大寺二月堂の建築様式は「懸造(かけづくり)」で、斜面に立つ巨大な建物は迫力満点。回廊に上がると、京都の清水寺に勝るとも劣らない絶景を眺めることができます。

懸造

東大寺 二月堂

懸造は、山や崖などに長い柱や貫で床下を固定してその上に建物を建てる建築様式のこと。石灯籠が並ぶ石畳から二月堂を見上げると、地面に立ち並ぶ木柱が回廊を支えている様子がよくわかります。

東大寺二月堂の石段には、数か所だけ、唐草・亀甲・青海波・流水・網代など美しい紋様が刻まれています。中には踏むとご利益があるという「ますかけ」も刻まれているので探してみるのもいいですね。ただし、階段から落ちないように要注意です。

東大寺二月堂

東大寺二月堂へ続く階段は、「登廊(のぼりろう)」という屋根付きの石段もあります。北側にある登廊は、お水取りの時に松明を持った練行衆が移動する階段です。

東大寺 二月堂 階段

回廊からの眺め

東大寺二月堂の景色

東大寺二月堂は奈良の絶景スポット!回廊に上がれば、美しい景色を一望できます。

東大寺二月堂 景色

東大寺大仏殿周辺、遠くに広がる奈良市街地や生駒山など、ダイナミックな風景はいつまでも見続けていたくなる美しさです。

東大寺裏参道

東大寺裏参道

二月堂裏参道は、東大寺大仏殿の裏側から二月堂に向かう坂道。漆喰の土塀に囲まれた石畳を歩いていると古の世界に迷い込んだみたいです。情緒ある坂道は人通りも少なくのんびり散策できる穴場スポットです。

東大寺裏参道

東大寺周辺にある塔頭寺院の鬼瓦や飾り瓦も必見です。

大湯屋

二月堂裏参道の近くにある大湯屋(おおゆや)は「日本最古の湯屋」で、かつて東大寺の僧侶たちが身を清めるために使った沐浴施設とされています。建物の中には「鉄湯船(てつゆぶね)」という鉄の湯船があり、重要文化財に指定されています。

さだまさし「修二会」

東大寺 二月堂 階段

さだまさしさんの「修二会」は東大寺二月堂のお水取りを題材にした歌ですが、千年以上続いている修行と激しい情念の世界が絡み合う歌詞は秀逸!この歌をきっかけに奈良を訪れる方もいらっしゃるのではないでしょうか。「達陀」や「五体投地」など仏法用語も多く難しい部分もありますが、お水取りの荘厳で神秘的な世界がありありと伝わってきます。

ふり向けば 既に君の姿はなく 胸を打つ痛み 五体投地
もはやお水取り やがて始まる達蛇の
水を清めよ 火を焼き払えよ この罪この業
走る火影 ゆれるあふれる涙 燃える燃える燃える松明燃える

『修二会』作詞作曲:さだまさし

達陀

達陀(だったん)は東大寺の修二会で行われる行法で、兜のような達陀帽をかぶった練行衆が跳ねながら燃え盛る松明を床にたたきつけます。火の粉が飛び散る勇壮な儀式は、火事になるのではと心配になるくらい迫力があります。

達陀は「八天」と呼ばれる8人の練行衆が行い、特に四職(ししき)という上席の4人は、それぞれ和上(わじょう)、大導師(だいどうし)、咒師(しゅし)、堂司(どうつかさ)と呼ばれ、ほかの練行衆は「平衆(ひらしゅ)」と呼ばれています。

五体投地

五体投地(ごたいとうち)とは、両手・両膝・額の五体を地面に投げ伏して、仏や高僧に礼拝することで、仏教では最も丁寧な礼拝方法とされています。

東大寺 二月堂 灯篭

良弁椿

良弁椿(ろうべんつばき)は、二月堂下の東大寺開山堂(良弁堂)にある椿のこと。東大寺を開山した僧・良弁の像が開山堂に祀られていることから「良弁椿」と呼ばれています。

また、赤い花に白い斑点が混じった開山堂の椿は、まだら模様が練行衆が造花を作る際にこぼした糊に似ていることから「糊こぼし」とも言われています。

東大寺の糊こぼし(良弁椿)は、伝香寺の散り椿、白毫寺の五色椿とともに、「奈良三銘椿」と称されています。良弁椿の開花時期は3月~4月。椿のある庭園は非公開ですが垣間から見ることができるようです。

春寒の弥生 3月花まだ来
君の肩にはらり 良弁椿
ここは東大寺 足早にゆく人垣の
誰となく独白く南無観世音 折から名残り雪

青衣の女人

青衣の女人(しょうえのにょにん)は謎の幽霊。鎌倉時代、修二会で練行衆が過去帳を読み上げている時、女人禁制の堂内に青い着物をまとった女性が忽然と現れ、「なぜ私の名を読み落としたのか」と言って幻のように消えていったと伝えられています。

それ以来、現在も過去帳で「青衣の女人」と読み上げているそうですが、その女性が誰なのかは諸説あり、青衣の女人の正体は今も謎のままだということです。

過去帳に青衣の女人の名を聞けば
僕の背に 君の香りゆらめく
ここは女人結界 君は格子の外に居り
息を殺して聴く南無観世音 こもりの僧の沓の音

松尾芭蕉の俳句”水取りや氷の僧の沓の音”が、さりげなく取り込まれています。芭蕉の句は「氷の僧」か「こもりの僧」か、意見の分かれるところですが、ここでは敢えて「こもりの僧」にしたのでしょう。

青衣の女人の伝説や古典文学などが織り交ざる恋愛歌はただの悲恋では終わらない凄みがあり、カルマの叫びが聞こえてくるようです。

「修二会」は「まほろば」「夢しだれ」とともに「奈良三部作」と呼ばれていますが、ほかにも、修学旅行をテーマにした「昨日・京・奈良、飛鳥・明後日。」など、奈良を題材にしたものがたくさんあります。奈良にはたくさんの観光名所がありますが、さだまさしさんの歌に登場する場所を訪ね歩く”歌めぐりの旅”もよさそうです。

東大寺二月堂の基本情報

東大寺二月堂(とうだいじにがつどう)
住所:奈良県奈良市雑司町406-1
電話:0742-22-551
拝観時間:24時間
拝観料:無料
アクセス
●近鉄奈良駅から徒歩約25分

最後に

約1,300年前から続く奈良の伝統行事「お水取り」。その舞台である東大寺二月堂から眺める絶景は四季折々の美しさが魅力です。修二会に限らず、ぜひ一度お出かけになってみてはいかがでしょうか。

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